歯にくっつきやすい。そんな奉天(ほうてん)に「もっと美味しくできるはず」と考えた一人の男がいました。大阪の菓子文化のひとつ「奉天」を作り続ける丸英製菓は、そんな小さな違和感から始まったお菓子屋です。
「英」の一字を丸で囲んで
丸英製菓という屋号は、創業者の名前「英雄」に由来しています。「英」の字を丸で囲み、「丸英製菓本舗」と名乗ったのが始まりでした。
理想の味を求めて、住込みの職人を迎えて
有平糖でかりんとう生地を包む工程
理想の味を追求するため、1955年に職人を住込みで迎え、小さな工房から創業しました。
「歯にくっつく」奉天への違和感から
創業者は、奉天の中のかりんとう生地を扱う仕事をしていました。さまざまな奉天を見ていく中で、「もっと美味しくできるはず」と考えるようになったといいます。その頃の奉天は歯にくっつきやすいものが多く、食べやすさに課題がありました。この商品が生まれたきっかけも、まさにこの違和感にあります。
天神さんに奉納したお菓子
商品名の「奉天」は、天神さんの家紋柄「梅鉢」に似ていることから「うめばち」と呼ばれるようになったと言われています。また、天神さんに奉納するお菓子であったことから「奉天」と呼ばれるようになったとも言われています。
「味で好かれる」奉天でありたい
丸英製菓が一番伝えたい価値は、「味で好かれる」という一言に集約されます。思っていた奉天と全然違う、また食べたいと言っていただける商品づくりを目指しています。奉天を通じて、お客様の日常に「ほっとできる時間」や「懐かしさを感じるひととき」を届けたいと考えています。昔ながらのお菓子だからこそ、世代を超えて家族や大切な人と一緒に楽しんでいただき、「これ、おいしいね」と会話が生まれるようなお菓子でありたい。これからも、一つひとつ丁寧に奉天を作り続けることで、お客様の暮らしの中に小さな幸せや笑顔を増やしていきたいといいます。
水飴を減らすほど、難しくなる
食感を良くするためには、水飴の量を極力減らさなければなりません。ただしその分、製造は難しくなります。大量生産ができず、一度に作れる量も限られ、職人同士のタイミングがずれると商品にならずロスが発生してしまう。それでも丸英製菓は、効率よりも品質を優先してきました。製造工程の多くは今も人の手で、職人たちが息を合わせながら丁寧に作り上げています。
特別ではない原料から
使用している原料に、特別なものはありません。素朴な原料から、菓子づくりを行っています。外側の白い皮部分は、砂糖に少量の水飴を煮詰めて作る有平糖(ありへいとう)です。水飴が少ないと製造もしにくく、ロスも多くなりますが、食感にこだわっているため、水飴は最小限に抑えています。
仕込みから仕上げまで、丸2日
切り分けられた奉天
奉天が完成するまでには、仕込みから仕上げまで約2日を要します。中のかりんとう生地を事前に揚げて冷ましておく工程に1日。それを有平糖で包んで細くし、切断していく工程にさらに1日。最も神経を使うのは、外側の有平糖部分を冷やしながら、中のかりんとう生地部分を煮詰めて包んでいくタイミングを合わせることです。タイミングがずれると、どちらの飴も固まって細くできなくなり、すべてがロスになってしまいます。
職人の目と手が守る、カリッとした食感
奉天づくりで最も苦労するのは、飴の状態を見極めながら、カリッとした食感に仕上げることです。気温や湿度などの環境によって飴の状態が変わるため、毎回同じ品質に仕上げるには細かな調整が必要になります。長年の製造経験をもとに、職人がその日の状態を見ながら火加減や作業のタイミングを調整し、一つひとつ丁寧に仕上げることで、安定した品質を保ってきました。
飴が柔らかくなってしまい、時間が経つと食感が悪くなってしまう。そんな失敗を重ねながら、原因を一つずつ確認し、煮詰める温度や時間、作業のタイミングを細かく調整してきました。その日の気温や湿度、飴の状態を見ながら製造する経験を、職人一人ひとりが身につけていったことが、今のカリッとした独特の食感につながっています。機械だけでは均一に仕上げることが難しく、どうしても人の目や手が必要になる工程がある。効率だけを考えれば工程を簡略化することもできますが、飴の状態を一つひとつ確認し、生地とのバランスを見ながら丁寧に仕上げることは、妥協せず続けているといいます。
大阪の菓子文化を、次の世代へ
奉天は、昔から親しまれてきた大阪の菓子文化のひとつとして、地域の人々の暮らしの中で受け継がれてきたお菓子です。丸英製菓は、昔ながらの製法や職人の技を大切にしながら、地域に根付いた「ものづくりの文化」を次の世代へつないでいくことが、奉天を作り続ける意味だと考えています。地域の皆さまに昔から親しまれてきた味を守りながら、これからも新しい世代の方にも奉天の魅力を知っていただき、地域のお菓子文化を未来へつないでいきたいといいます。
奉天の魅力を3つ挙げると
色とりどりの奉天
丸英製菓の一番の魅力を3つ挙げるとすれば、次の通りです。砂糖を多く、水飴を少なくして作る有平糖で包むことで生まれる、一般的な飴とは違うカリッとした独特の食感。多くの工程を人の手で丁寧に仕上げる、職人の手仕事によるものづくり。そして、どこか懐かしく素朴な味わいで、子どもから大人まで、世代を超えて楽しめること。お茶の時間や家族との団らんなど、日常のさまざまな場面で親しんでいただけることも魅力です。
温かいお茶と一緒に
奉天は、温かいお茶やコーヒーと一緒に、ゆっくり味わっていただくのがおすすめです。カリッとした飴の食感と、サクサクとしたかりんとう生地の食感を楽しみながら、昔ながらの素朴な甘さを味わっていただけます。おやつやティータイムはもちろん、ご家族や友人との団らんの時間にみんなで楽しんでいただくのもおすすめです。普段のおやつや家族団らんの時間はもちろん、来客時のお茶菓子や、職場でのちょっとした差し入れにも。季節を問わず楽しめるお菓子なので、お中元・お歳暮などの季節の贈り物や、帰省の手土産、敬老の日など、大切な方への贈り物にも適しています。
「初めて食べたけれど美味しい」という発見
最近では、昔ながらのお菓子に馴染みのない若い世代の方にも、「初めて食べたけれどおいしい」「食感が面白い」と、新しいお菓子として楽しんでいただけることがあるといいます。「昔は親に買ってもらって食べていたけれど、今は自分が子どもに買ってあげています」というお話をいただいたこともあり、奉天が世代を超えて受け継がれていることを実感しているそうです。リピーターの方からは、「カリッとした食感がクセになる」「素朴な甘さで、ついつい手が伸びる」といった声も届いています。
これから目指す先
昔ながらの奉天の味や製法を大切にしながら、これまで奉天を知らなかった若い世代の方にも興味を持っていただける商品づくりに挑戦したいと考えています。味やサイズ、パッケージなどに新しい工夫を加え、普段のおやつだけでなく、手土産や贈り物としても選んでいただける奉天を増やしていきたい。奉天を「昔ながらのお菓子」で終わらせず、これからの世代にも愛されるお菓子として未来へつないでいくこと。「昔食べた懐かしいお菓子」から、「今も、これからも食べたいお菓子」へ。奉天を通じて世代を超えて笑顔や会話が生まれ、地域の菓子文化が次の世代へ受け継がれていく、そんな未来を目指しています。
読者の方へ
奉天をまだ食べたことのない方には、ぜひ一度、その食感と味わいを楽しんでいただきたいです。カリッとした飴とサクサクとしたかりんとう生地の組み合わせは、シンプルだからこそ、何度でも食べたくなるおいしさがあります。昔から奉天を知っている方には「懐かしい」と感じていただき、初めての方には「こんなお菓子があるんだ」と新しい発見をしていただければ嬉しく思います。丸英製菓は、2024年のOMOTENASHIセレクションを受賞し、選ばれる企業関西100選にも選出されています。
※丸英製菓は、現在ENGAWA STOREオンラインストアではまだお取り扱いがございません。ENGAWA ASAKUSAにてご購入いただけます。